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選択的夫婦別姓制度について考える 〜日本の文化と現実的な解決策〜


 近年、選択的夫婦別姓制度についての議論が活発化している。「結婚後も姓を変えたくない」「自分のアイデンティティを守りたい」といった意見がある一方で、「家族の一体感が失われる」「子供の姓はどうなるのか」といった懸念も根強い。本記事では、日本の文化的背景を踏まえつつ、現実的な解決策について考えてみたい。

日本における姓の文化的背景

日本では古くから「結婚=その家に入る」という考え方が根付いていた。嫁入り・婿入りという言葉に象徴されるように、結婚とは単に夫婦がともに生活を始めることではなく、一つの家に入ることを意味していた。かつての戸籍制度は家単位であり、家族が一つの姓を名乗ることが当然とされてきた。

1947年の民法改正以降、現在の戸籍制度では「夫婦と未婚の子供」を単位とする仕組みに変わったが、それでも基本的な考え方は変わっていない。しかし、日本の戸籍制度は家制度時代と比べて個人に近づいたものの、依然として「家族単位」の要素を持つため、完全な個人単位ではない点に注意が必要である。

また、海外では個人単位の戸籍制度を採用している国が多く、日本とは法制度の前提が異なるため、単純な比較は難しい。「家単位の戸籍から夫婦・子供単位への移行」という制度変化を明記すると、日本の家族制度の変遷がより明確になる。

選択的夫婦別姓の問題点

選択的夫婦別姓に賛成する立場からは、「姓を変えることが個人のアイデンティティを損なう」「仕事上の不便が生じる」といった意見がある。しかし、制度を導入するにあたっては、以下のような問題点を考慮する必要がある。

1. 子供の姓はどうするのか?

夫婦がそれぞれの姓を名乗る場合、生まれてくる子供の姓はどちらを選ぶのか。フランスやドイツでは両親の姓を組み合わせる制度があるが、日本の戸籍制度では対応が難しい。韓国では夫婦別姓を基本としながらも、子供の姓は父母のどちらかに統一する制度となっている。このように、国ごとに異なる対応が求められている。

現在の日本の法制度では、選択的夫婦別姓が導入された場合、子供の姓をどのように決定するかの明確なルールが整備されていない点が大きな課題となっている。日本でも韓国のように「父母のどちらかの姓を選択する」ルールや、フランスのように「両親の姓を組み合わせる」選択肢を取り入れるかどうか、慎重な議論が必要である。この問題が未整備であるため、導入時には具体的なガイドラインの策定が必須となる。

通称使用や手続きの簡素化

1. 通称の法的使用

姓を変えることが負担と感じる人のために、通称の使用を法的に認める制度を整備する。2021年より、住民票やマイナンバーに旧姓を併記可能となったが、銀行口座やパスポートなどでは旧姓の利用が制限されるケースがあるため、さらなる手続きの簡素化が求められる。また、企業の対応もバラつきがあり、法的な一本化が必要である。

2. 姓変更時の手続き簡素化

結婚時に姓を変更する場合、各種手続きが煩雑であることが問題視されている。これをデジタル化し、ワンストップで変更できるようにすることで、負担を軽減する。例えば、デンマークでは結婚後の姓変更がオンラインで簡単にできる。日本でもマイナンバーと連携したオンライン手続きを整備すれば、負担が軽減できる。

最新の法改正・社会動向

2023年の最高裁判決では、「夫婦同姓の規定は合憲」と判断されたものの、裁判官の中には「再検討すべき」との意見も見られた。さらに、2023年の内閣府の世論調査では、選択的夫婦別姓に賛成する意見が50%を超え、反対意見を上回る結果となった。このように、社会の価値観の変化が進んでいる。

また、企業では旧姓使用の対応が進んでいるが、法的に統一されていないため、業界ごとの差がある。特に、海外在住の日本人家庭では、夫婦別姓が一般的な国との制度の違いにより、不便を感じるケースが報告されている。姓の統一を望む人と別姓を望む人の両方が共存できる仕組みが必要とされている。

まとめ

選択的夫婦別姓は、多様な価値観を尊重する上で重要な議論ではあるが、日本の文化や家族のあり方を考慮しないまま導入することには慎重であるべきだ。姓を変えたくない人のために通称使用の法的担保を整えたり、子供の姓を事前に決めるルールを設けるなど、文化的背景と現実の課題を踏まえた制度改革が求められる。最新の最高裁判決や世論調査の結果も踏まえ、夫婦別姓を求める声と、家族の一体感を重視する声の両方に配慮した制度の在り方を模索することが求められる。